適性の無い仕事 [とんでも人間、とんでも薬剤師]
今回は少し「九子のダメ母の証日記」と共通する部分があります。
私、今でも鮮明に覚えているのですが、大学生の頃近くの公民館みたいなところでするサークル活動みたいなのに誘われていった時、一人の女の子と知り合いました。
「薬科大生なの?凄いわね!」と言われて、私はなんのためらいもなく、何時も皆に言ってる言葉を繰り返しました。
「いや、私は親の言うままに薬大に入ったの。適性なんかまったく無いし、本当はすぐにでもやめたいのよ。」
それを聞いた彼女の顔つきは突然険しくなりました。
「あなた、何言ってるの?そんな甘えたこと言ってるんじゃ無いわよ!
薬大に入りたくたって入れない人、薬剤師になりたくたってなれない人がたくさん居るのよ。あなたはしっかり勉強して、立派な薬剤師さんにならなきゃ!!」
今思えば、彼女もたまたまそういう人たちの一人だったのかもしれません。
とにかく九子は彼女の剣幕にたじたじとしてしまい、でも現実はどう考えても立派な薬剤師にはなれそうも無いし・・。泣きたい気持ちになりました。
何時も言うように私は不器用で要領も悪いので、一つの事をするのに人の何倍も時間がかかります。その上出来上がりの見た目も最悪。
でも、手早で良く出来る人は、もしかしたら出来ない人間のことなどわからないでいるかもしれません。
人は皆、自分を基準にして物を考えますから、このくらいのことはこのくらいで出来そうなものだ・・という基準は、あくまでも自分中心です。
あの時の彼女もきっとそうだったのでしょう。
私が出来ることと、薬大の授業でする実験の力量の差が私にとってはあまりにも大きすぎて
沈みそうだったのです。
でもそれが、「出来る人」には理解できない。
(つづく)